【2026年最新】歌舞伎の人間国宝は誰?現役俳優6人の一覧
2026年11月1日時点で、歌舞伎俳優として重要無形文化財の各個認定を受け、歴代の認定一覧に掲載されている現役の俳優は、次の6人です。
| 俳優名 | 認定年 | 認定分野 |
|---|---|---|
| 七代目尾上菊五郎 | 2003年(平成15年) | 歌舞伎立役 |
| 五代目坂東玉三郎 | 2012年(平成24年) | 歌舞伎女方 |
| 十五代目片岡仁左衛門 | 2015年(平成27年) | 歌舞伎立役 |
| 六代目中村東蔵 | 2016年(平成28年) | 歌舞伎脇役 |
| 四代目中村梅玉 | 2022年(令和4年) | 歌舞伎立役 |
| 五代目中村歌六 | 2023年(令和5年) | 歌舞伎脇役 |
この一覧は、公益社団法人日本俳優協会などが運営する「歌舞伎 on the web」の重要無形文化財各個指定一覧に基づいています。歌舞伎俳優の部門では、2023年の中村歌六が最後に掲載されている認定者です。
七代目尾上菊五郎:江戸歌舞伎の伝統を担う立役

- 認定年:2003年
- 認定分野:歌舞伎立役
- 屋号:音羽屋
江戸歌舞伎の芸を受け継ぎ、世話物から時代物まで幅広い役柄を担ってきた名優です。
尾上菊五郎の名前を調べる際に、特に注意したいのが2025年の襲名です。
2025年5月、五代目尾上菊之助が八代目尾上菊五郎を襲名しました。一方、それまでの当代は七代目尾上菊五郎の名を引き続き名乗ることになりました。
つまり、2026年現在は七代目と八代目の2人が尾上菊五郎の名跡に関係しています。
人間国宝として2003年に認定されたのは、七代目尾上菊五郎です。八代目が襲名によって自動的に人間国宝の認定を引き継いだわけではありません。
五代目坂東玉三郎:女方の芸を極めた名優
- 認定年:2012年
- 認定分野:歌舞伎女方
- 屋号:大和屋
歌舞伎を代表する女方の一人。女性の姿や所作、感情表現を高度な演技として確立してきました。
坂東玉三郎の認定で注目されるのは、歌舞伎女方という独立した技芸が高く評価された点です。
女方は単に女性の衣装を着て演じる役ではありません。立ち姿、歩き方、手の動き、声、視線などを通して女性の人物像を表現する、長い修業を必要とする専門分野です。
十五代目片岡仁左衛門:重厚な立役の伝統
- 認定年:2015年
- 認定分野:歌舞伎立役
- 屋号:松嶋屋
時代物、世話物を問わず幅広い役柄を担う、歌舞伎界を代表する立役です。
片岡仁左衛門は、人物の内面を表すせりふ回しや、舞台上での存在感などで高い評価を受けています。
2025年には文化勲章も受章しました。これは人間国宝の認定とは別の顕彰制度ですが、歌舞伎界における長年の功績を考えるうえで重要な出来事です。
六代目中村東蔵:脇役の技芸を支える存在
- 認定年:2016年
- 認定分野:歌舞伎脇役
- 屋号:加賀屋
主役を取り巻く人物を演じ、物語の説得力を高める脇役の名手です。
中村東蔵の認定は、主役を演じる俳優だけでなく、舞台全体を支える脇役の技芸も国の文化財保護の対象として重視されていることを示しています。
四代目中村梅玉:品格ある立役の芸
- 認定年:2022年
- 認定分野:歌舞伎立役
- 屋号:高砂屋
古典歌舞伎の伝統を受け継ぎ、端正で品格のある演技を担う俳優です。
2022年の認定によって、歌舞伎立役の伝統を守る保持者として新たに評価されました。
五代目中村歌六:脇役の重要性を示した認定
- 認定年:2023年
- 認定分野:歌舞伎脇役
- 屋号:播磨屋
多彩な役柄を演じ、長年にわたって歌舞伎の舞台を支えてきた俳優です。
2023年7月21日、重要無形文化財「歌舞伎脇役」の各個認定を受けることが発表されました。
歌舞伎美人のインタビューでは、先輩や家族への感謝とともに、認定に伴う責任について語っています。
歌舞伎脇役の人間国宝としては、中村東蔵に続く2人目となりました。
【認定基準】歌舞伎の人間国宝はどう選ばれる?
人間国宝は、歌舞伎界で長く活躍した人に自動的に与えられる称号ではありません。
正式には、重要無形文化財の保持者として「各個認定」を受けた人物を指す通称です。
重要無形文化財とは何か
文化庁によると、無形文化財とは、演劇、音楽、工芸技術など、日本の歴史や芸術のうえで価値の高い文化的所産を指します。
歌舞伎の場合、衣装や舞台装置といった物そのものだけでなく、俳優が身につけた演技、せりふ、舞踊、伝承されてきた型などの技芸が保護の対象になります。
歌舞伎は江戸時代に発展し、能楽や人形浄瑠璃などの影響を受けながら独自の演劇様式を形成してきました。
その芸術的価値と歴史的重要性を踏まえ、国が重要無形文化財として指定しています。
人間国宝の認定で重視される3つの観点
認定の根本にあるのは、特定の芸能や技法を高度な水準で体現できるかどうかです。
具体的には、次のような観点から考えると制度を理解しやすくなります。
1. 芸術的な完成度: 長年の修業によって培われた高度な技芸を持っていること。
2. 伝統の継承: 重要無形文化財に指定された技芸を正しく体得し、熟知していること。
3. 文化的な価値: 日本の芸能史や伝統芸能の継承において重要な技芸を体現していること。
重要無形文化財の指定基準では、芸術上の価値や芸能史上の重要性が評価の柱になっています。
一方、認定には「何歳以上」「受賞歴が何回以上」といった単純な数値条件が設けられているわけではありません。
誰が認定するのか
認定の流れには、文化審議会と文部科学大臣が関わります。
文化財として価値のある芸能・技芸
専門的な調査・文化審議会での審議
文部科学大臣による認定
重要無形文化財保持者(各個認定)
一般にいう人間国宝
制度の法的根拠は文化財保護法第71条です。同条では、文部科学大臣が重要無形文化財を指定するとともに、その保持者または保持団体を認定することが定められています。指定後に保持者を追加認定することも可能です。
人間国宝には年間200万円の特別助成金がある
文化庁の説明では、各個認定の保持者には、技芸の錬磨向上と伝承者の養成を目的として、年額200万円の特別助成金が交付されています。
これは一般的な給与や年金ではありません。
伝統芸能の技術を維持し、次の世代に伝えていくための文化財保護上の支援です。
人間国宝という制度が、個人の名誉だけでなく、日本の伝統芸能そのものを守る仕組みであることが分かります。
【徹底比較】各個認定と総合認定は何が違う?伝統歌舞伎保存会との関係
歌舞伎の人間国宝を調べると、必ず出てくるのが「各個認定」と「総合認定」という2つの言葉です。
両者は同じ重要無形文化財の保持者に関係する制度ですが、認定対象が違います。
各個認定は個人の技芸を評価する制度
各個認定は、特定の芸能や技芸を高度に体現できる個人を認定する方式です。
この保持者が、一般に人間国宝と呼ばれます。
歌舞伎では、立役、女方、脇役といった特定の技芸について、個人の高度な技術が認定されています。
総合認定は集団で受け継ぐ芸能を評価する制度
一方、総合認定は、複数の人が一体となって芸能を高度に体現している場合、その団体を構成する人々を保持者として認定する方式です。
歌舞伎は、一人の俳優だけで成立する芸能ではありません。
立役、女方、脇役に加え、長唄、竹本、鳴物など、多くの専門家が協力して一つの舞台をつくります。
そのため、個人の技芸だけでなく、舞台芸術全体を支える集団としての継承も保護されているのです。
伝統歌舞伎保存会とは?
1965年3月1日に設立され、歌舞伎に関わる俳優や演奏家、舞台を支える専門家の技芸の保存・育成に取り組んでいます。
同会の説明によれば、会員は俳優、竹本、長唄、鳴物、狂言作者などの分野から選ばれ、原則として舞台経験20年以上の技芸優秀な人々によって構成されています。
ここで押さえたいのは、伝統歌舞伎保存会の会員だからといって、その全員が個人認定の人間国宝というわけではないという点です。
2026年最新の伝統歌舞伎保存会の会員数
伝統歌舞伎保存会が公表している会員一覧によると、2026年1月27日現在の人数は次のとおりです。
| 分野 | 現会員 | 物故・引退会員 |
|---|---|---|
| 俳優 | 135名 | 179名 |
| 長唄(唄方) | 13名 | 17名 |
| 長唄(三味線方) | 11名 | 22名 |
| 鳴物 | 22名 | 22名 |
| 竹本(太夫) | 11名 | 11名 |
| 竹本(三味線方) | 12名 | 11名 |
| 狂言作者 | 3名 | 9名 |
| 合計 | 207名 | 271名 |
出典:伝統歌舞伎保存会「会員一覧」、2026年1月27日現在。
現会員は合計207名で、そのうち俳優は135名です。
なお、同会の現会員一覧の詳細ページには、2025年3月31日現在という基準日が記載されています。そこでは昭和40年の第一次認定から続く、総合認定保持者としての会員の変遷も確認できます。
この数字と各個認定の人間国宝6人を混同しないことが大切です。
【役柄別に解説】歌舞伎立役・女方・脇役の人間国宝は何が違う?
歌舞伎の人間国宝を理解するには、認定された技芸の違いを知る必要があります。
特に重要なのが、立役、女方、脇役という3つの分野です。
立役(たちやく)
男性の役柄を演じる俳優の専門分野です。主役を演じる男性役を中心に、力強さや人物の風格、せりふの表現などが求められます。
代表的な保持者:七代目尾上菊五郎、十五代目片岡仁左衛門、四代目中村梅玉。
女方(おんながた)
女性の役柄を演じる男性俳優の専門分野です。独自の所作や身体表現、声の使い方などによって女性像を表現します。
代表的な保持者:五代目坂東玉三郎。
脇役(わきやく)
主役を取り巻く人物を演じる専門分野です。敵役、老人役、その他の人物を通じて、物語に厚みを与えます。
代表的な保持者:六代目中村東蔵、五代目中村歌六。
立役は主役だけを意味するのか
立役は、歌舞伎における男性の役柄を担う技芸です。
一般的には主役を演じる男性の役柄として説明されますが、単純に「主役を演じる人」という意味だけで理解すると、歌舞伎の役柄の幅を見落とします。
人物の性格や身分、物語上の役割に応じた演技が必要です。
国指定文化財等データベースでは、歌舞伎立役を歌舞伎成立に欠かせない演技の役柄として説明しています。
女方は女性役を演じる男性俳優
歌舞伎の女方は、女性の役を演じる男性俳優です。
歌舞伎の歴史では、女性中心の芸能から発展した後、女性の舞台出演が禁止された時代を経て、男性が女性を演じる形式が確立しました。
その過程で、女方独自の演技術が磨かれ、若い女性から年配の女性まで、役柄に応じた表現が発展していきました。
坂東玉三郎が人間国宝に認定されたことは、この独自の技芸が重要無形文化財として高く評価されたことを示しています。
脇役は主役より評価が低いのか
これは大きな誤解です。
歌舞伎脇役は、主役以外の人物を演じる技芸ですが、決して重要度の低い役割ではありません。
江戸時代には敵役、親仁方、花車方などの専門分野があり、それぞれに優れた俳優が存在しました。
脇役の演技が弱ければ、主役の人物像も物語の緊張感も成立しません。
2023年の中村歌六の認定は、脇役の芸が歌舞伎の伝統を支える重要な技芸であることを改めて示しました。
実際、脇役の各個認定は1997年に重要無形文化財として指定され、2016年に中村東蔵、2023年に中村歌六が保持者となっています。
【歴代一覧】歌舞伎の人間国宝はどのように受け継がれてきた?
歌舞伎の人間国宝の歴史をたどると、1955年から現在まで、さまざまな役柄と芸の系譜が評価されてきたことが分かります。
歌舞伎 on the webの歴代認定一覧を年代順に整理すると、次のようになります。
1950年代:歌舞伎舞踊の技芸が認定される
- 1955年:七代目坂東三津五郎
最初期の認定者の一人です。歌舞伎舞踊の分野で認定されました。
1960年代:立役・女方・脇役の技芸が広がる
- 1960年:三代目市川寿海、六代目市川團之助
- 1964年:三代目市川左團次
- 1967年:二代目中村鴈治郎
- 1968年:三代目尾上多賀之丞、七代目尾上梅幸、六代目中村歌右衛門
この時期には、立役だけでなく女方や脇役の名優も認定されています。
1970年代:名門の芸と古典の継承
- 1972年:二代目尾上松緑、十三代目片岡仁左衛門
- 1973年:八代目坂東三津五郎
- 1975年:十七代目中村勘三郎、初代松本白鸚
歌舞伎の伝統を支える名優たちが認定され、現在に続く芸の系譜が形成されていきました。
1990年代:幅広い専門分野の認定
- 1990年:十七代目市村羽左衛門
- 1991年:四代目中村雀右衛門
- 1994年:四代目坂田藤十郎、五代目中村富十郎
- 1996年:七代目中村芝翫
- 1997年:二代目中村又五郎
1990年代には、それぞれの役柄における専門性が引き続き評価されました。
2000年代:脇役と立役の伝承
- 2002年:六代目澤村田之助
- 2003年:七代目尾上菊五郎
七代目尾上菊五郎の認定は、現在の歌舞伎界を代表する保持者の系譜につながっています。
2010年代:現代歌舞伎を支える名優たち
- 2011年:二代目中村吉右衛門
- 2012年:五代目坂東玉三郎
- 2015年:十五代目片岡仁左衛門
- 2016年:六代目中村東蔵
- 2019年:二代目片岡秀太郎
この時期には、立役、女方、脇役それぞれの分野で認定が続きました。
2020年代:中村梅玉・中村歌六へ
- 2022年:四代目中村梅玉
- 2023年:五代目中村歌六
2023年の中村歌六の認定以降、2026年11月時点で、歌舞伎俳優の各個認定一覧に新たな認定者は掲載されていません。
歴代の認定者を通覧すると、歌舞伎の保存は特定の名跡や家だけに限定されるものではなく、異なる専門技芸を持つ俳優によって支えられてきたことが分かります。
【間違いやすいポイント】歌舞伎の人間国宝に関する3つの誤解
誤解1:尾上菊五郎を襲名すれば人間国宝になる?
これは正しくありません。
2025年に八代目尾上菊五郎が誕生しましたが、人間国宝の認定は名跡ではなく個人の技芸に対して行われます。
七代目尾上菊五郎が受けた認定を、八代目が襲名だけで引き継ぐことはありません。
名跡の継承と文化財保持者の認定は、別々の制度です。
誤解2:伝統歌舞伎保存会の会員は全員人間国宝?
これも間違いです。
伝統歌舞伎保存会は総合認定保持者の団体であり、会員は集団で歌舞伎の技芸を継承する立場にあります。
各個認定は、個人の技芸を評価する別の制度です。
両者は歌舞伎の保護という目的を共有していますが、認定方式が異なります。
誤解3:文化勲章や日本芸術院会員も人間国宝と同じ?
同じではありません。
例えば、片岡仁左衛門は人間国宝であるとともに、2025年に文化勲章を受章しています。
しかし、文化勲章、日本芸術院会員、文化功労者、重要無形文化財保持者は、それぞれ異なる制度です。
人物の経歴を調べる場合には、どの制度による顕彰なのかを分けて理解する必要があります。
【人間国宝歌舞伎】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:2026年現在、歌舞伎の人間国宝は何人いますか?
歌舞伎俳優の各個認定保持者として、現役の俳優は6人です。七代目尾上菊五郎、五代目坂東玉三郎、十五代目片岡仁左衛門、六代目中村東蔵、四代目中村梅玉、五代目中村歌六が該当します。
Q2:歌舞伎で最も新しく人間国宝に認定された俳優は誰ですか?
歌舞伎俳優の各個認定では、2023年に認定された五代目中村歌六です。認定分野は歌舞伎脇役です。
Q3:坂東玉三郎は何の分野で人間国宝になったのですか?
2012年に重要無形文化財「歌舞伎女方」の保持者として認定されました。女性役を演じる男性俳優の高度な演技技術が評価されています。
Q4:中村梅玉と中村歌六は何年に認定されましたか?
四代目中村梅玉は2022年に歌舞伎立役、五代目中村歌六は2023年に歌舞伎脇役の各個認定を受けました。
Q5:伝統歌舞伎保存会の会員一覧と人間国宝一覧は同じですか?
異なります。伝統歌舞伎保存会の現会員は総合認定に関係する人々であり、人間国宝は各個認定の保持者です。会員一覧に掲載されていても、個人認定の人間国宝とは限りません。
Q6:八代目尾上菊五郎も人間国宝ですか?
2025年の襲名によって、八代目尾上菊五郎が誕生しました。ただし、七代目尾上菊五郎が2003年に受けた人間国宝の認定は、八代目に自動的に引き継がれるものではありません。
まとめ:歌舞伎の人間国宝は肩書より認定分野を理解することが大切
歌舞伎の人間国宝は、単に有名な俳優や長く活躍した役者を表す言葉ではありません。
重要無形文化財の各個認定という制度によって、日本の伝統芸能を高度な水準で体現する技芸の保持者として認められた人々です。
2026年11月時点の現役俳優は、次の6人です。
- 七代目尾上菊五郎:立役
- 五代目坂東玉三郎:女方
- 十五代目片岡仁左衛門:立役
- 六代目中村東蔵:脇役
- 四代目中村梅玉:立役
- 五代目中村歌六:脇役
【プロの結論】
歌舞伎の人間国宝を理解するうえで、最も大切なのは3つの区別です。
第一に、個人の技芸を評価する各個認定と、集団で芸能を継承する総合認定を混同しないこと。
第二に、立役・女方・脇役それぞれに固有の技芸があり、主役だけが歌舞伎を支えているわけではないこと。
第三に、襲名による名跡の継承と、人間国宝という個人への認定は別であることです。
歌舞伎の伝統は、一人の名優だけで守られてきたものではありません。俳優、演奏家、舞台を支える人々が、それぞれの技芸を次の世代へ伝えることで受け継がれてきました。
人間国宝の一覧を知ることは、その長い歴史と舞台芸術の奥深さを理解する第一歩になります。